広島高等裁判所松江支部 昭和53年(ラ)3号 決定 1978年4月24日
抗告人 村田真佐夫(仮名)
相手方 町田恵子(仮名)
事件本人 村田恵美(仮名) 外一名
主文
本件抗告を棄却する。
理由
本件抗告の趣旨及び理由は別紙(略)のとおりである。
そこで検討するに、記録によれば原審判で認定された各事実を認めることができ、右事実、ことに事件本人らがいずれもまだ幼少で、現在母親である相手方の許で平穏に生活していること、協議離婚の際親権者を抗告人と定めた経緯並びに記録により認めることができる協議離婚の直後に抗告人が事件本人まさみについてその監護者である相手方に対し子の引渡を求めたことを契機に相手方が本件親権者変更の申立をし、他方抗告人は事件本人まさみの監護者変更の申立をし(その後取下)、更に事件本人らの子の引渡仮処分の申立をするなど、現在においては子らの親権者と監護者を分離しておくことが必らずしも望ましくない状態にある事実などに照らせば、事件本人らの親権者を抗告人から相手方に変更することとした原審判は相当であると考えられる。抗告人主張のとおり、経済力の面では相手方よりも抗告人の方が優つているけれども、この点は養育費用の分担の問題として別途に解決を図り得ることであり、また当審において提出された預金の残高証明によれば抗告人の父が事件本人らの名義で預金していることが認められるが、これらの点はいずれも前記認定判断を左右するものではない。また、抗告人は、原審が調査官による本件の調査報告書の閲覧謄写を許可しなかつたことが不当である旨主張し、記録によれば原審が右報告書中調査官の所見欄を除いてその謄写を許可したことが認められるけれども、家庭裁判所の後見的な介入が予定されている家事事件の性質上、調査報告書の閲覧謄写を許可するか否かは当該家庭裁判所の裁量に委ねられている(家事審判規則一二条参照)のみならず、調査報告書のうち調査官の意見の表明であるその所見欄の閲覧謄写を許さないことが不当であるとは到底考えることができない。
よつて、本件即時抗告は理由がないのでこれを棄却することとして、主文のとおり決定する。
(裁判長裁判官 藤原吉備彦 裁判官 前川鉄郎 瀬戸正義)